人はなぜアートをみるのか?
ワシダです。暑いですね。
こんな暑い夏は円山応挙がオススメです。
幽霊画でも知られる応挙ですが、山水もまた、まことにすずやかです。なかでも私が好きなのは氷図屏風。
氷上に走る亀裂を締まりのある線描で描いた本作は、透き通るような空気と静けさをたたえています。みるだけで、心までキリッと涼しくなる気がしませんか?
そう、藝術とは新世代の冷房装置!人は涼しくなるためにアートをみるのです!
というのは、嘘で。やっぱりクーラーつけなきゃやってられません。
良いと思います。文明。
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タイトルの「人はなぜアートをみるのか?」という問いは最近とある方からされた質問です。
冷静に考えると鬼のような質問です。私にとっては「お前はなぜ生きているのか?」と同等です。もしも、質問者が美術関係者だったら、確実に一悶着ありそうなところです。
が、幸いにも質問者は美術関係者ではなかったので、(もちろん、その方に悪気は全くなく、私も特に不愉快に思った訳ではないですし)逆に冷静に、真面目に考えました。
考えてみれば、そんな当たり前のことも、上手く応えられないんですね。ちょっと情けなくなりましたね。
一つの業界にいると考えが凝り固まって、基本的な事を考えなくなってしまいます。特に美術業界は歴史がある割にコミュニティが狭いので、小さな世界に落ち込みやすいです。外の方との出会いは、新鮮な問いかけを与えてくれるものです。
感謝感謝。
からプロでは「社会とアート」をつなげよう!などとよく言っていました。今も私は日本の「アートインダストリー」を社会に機能させる事を目標にしています。(アート・インダストリーって?というかたは、 辛美沙著『アート・インダストリー』美学出版2008 を 是非!お読みください)
しかし、そのために必要な事は、アートファンを増やすことじゃないんです。
そういうの(アートプロジェクトとか、アートイベントとか)も良いけど、それは一過性で、本質的ではない。たぶんやっている当人もそれが本質的でないことに薄々気がついている。
じゃぁどうしたらいいの?
たぶん。たぶんですよ。
「問題意識を共有する事」
じゃないかなぁと思うのです。
美術関係者と美術関係者でない人が互いの問題を共有し、その課題解決の手段として芸術が活用されれば、文字通りwin-winです。いや、niko-nikoです。
だからこそ美術関係者は今こそ社会と対話しなければならないのです。内輪喧嘩している場合じゃないのです。
(なんか幕末っぽいぞ!)
はっきり言いましょう。
『漫画はアートか否か?』なんて問題は内輪揉めに過ぎません。「こんまい話」です。「どーでもいー話」です。「どげんかせんといかん」問題は他にあるのです。
いざ!
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ここまで読んで、かつての私を知っている方は憤慨されるかもしれません。私はちょっと前までは「アートファンを増やすためにアートイベントを企画」し、「絵本や漫画もアートである」と論を戦わせていたような人間です。「矛盾している!」といわれても無理もない。スミマセン。
でも、単に考えが変わっただけです。
「じゃぁ今の考えも変わるんじゃないか!?」
はい。多分変わっちゃいます。
「そんなお軽い奴に芸術のこととやかくいわれたくない!」
どっしりと腰を据えて、ズブズブと沼にはまるよりはマシです。
すこし、ギスギスした文章になってしまいました。
このへんでやめておきます。なぷーん。
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さて、『人はなぜアートをみるのか?』
「美」には「良い」という意味があります。また、artの原義は「術」。だから、明治の人は「fine art」を「美術」と訳したのですね。
「美術をみる」ということは「良いことを知る」ということ?真摯な眼差し?対象への優しさ?
暇つぶしに円山応挙の図集を眺めながら考えていました。
私は困ったり、つらかったりすると、だいたい『美術』をみています。それだけで、少し自分の周りの世界が美しく(良く)見えるからです。私が「美術をみる」理由はそんなところにあるのかもしれません。
これはあくまでも『私の』アートを見る理由ですけどね。
私も応挙の眼差しを借り、目の前の問題と真摯に、また丁寧に時間をかけて向き合ってみたいと思いました。
ここまで読んでくださったあなたに質問です。
あなたがアートをみる理由ってなんですか?
ワシダアキ
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